【論文・研究解説】フェイスラインはボトックスリフトで本当に引き上がるのか?
― 皮内ボツリヌストキシン注射に関する文献の解説 ―
福岡県久留米市にある”まさあき耳鼻咽喉科と美容のクリニック”です。
「ボトックスを浅く広く打つと、フェイスラインが引き上がる」
このような“ボトックスリフト”は、近年多くのクリニックで行われている施術です。
しかし一方で、
「本当にリフトアップしているのか?」
「気のせいではないのか?」
という疑問が長年議論されてきました。
今回は、皮内ボツリヌストキシン注射によるフェイスリフト効果を検証した臨床研究をもとに、
ボトックスリフトの効果・限界・適応について、医学的に解説します。
そもそも「ボトックスリフト」とは?
当院で行っているボトックスリフトは、
通常の表情ジワ治療よりも浅い層に、極少量のボツリヌストキシン製剤を広範囲に注入する方法です。
主に
- フェイスライン
- 下顔面
- 頚部(広頚筋)
にかけて注入し、以下の効果を狙います。
期待される効果
- フェイスラインの引き締め・軽度リフトアップ
- たるみ・もたつきの改善
- 自然な仕上がり(表情が固まりにくい)
- 毛穴・皮脂・汗の抑制
- 肌質改善、小じわ改善
「ボツリヌストキシン注射で直接皮膚を引き上げる」のではなく、「下に引き下げる筋肉の力を弱めその結果相対的に引き上げる筋力を優位にしたり、皮膚全体をタイトにする施術」です。
文献紹介:ボトックスリフトは実際に効くのか?
研究概要
Journal of Cosmetic Dermatology に掲載された論文では、
アボボツリヌストキシンA(Dysport®)を皮内注射した場合、本当にリフトアップ効果があるのかを検証しています。
この研究は以下のような方法でおこなわれました。
左右の顔を比較する「スプリットフェイス法」が採用され、片側の顔にはボツリヌストキシン製剤を皮内注射し、反対側の顔には生理食塩水(プラセボ)を同じ方法で注射しています。さらに、施術を受ける患者さん自身も、評価を行う医師も、どちらの側にボトックスが注射されたか分からない二重盲検デザインとされており、評価には標準化された写真による客観的評価と、患者さん自身による主観的評価の両方が用いられました。このように本研究は、「気のせい」や「思い込み」といった心理的影響を可能な限り排除するよう設計された、信頼性の高い臨床試験です。
結果 ボトックス皮内注射は“統計的に”有効だった
研究の結果、以下のことが分かりました。
医師評価にてフェイスリフト効果ありと判定された割合
- ボトックス側:40.9%
- 生理食塩水側:4.5%
両者には統計学的に有意な差があり、
「皮内ボツリヌストキシン注射には、一定のリフトアップ効果がある」
と結論づけられています。
患者自己評価でも約50%が効果を実感
患者自身の評価でも、
約半数が「ボトックス側の方が引き締まった」と回答しています。
ポイント①:効きやすい人の特徴
この研究では「効きやすい人の特徴」が示されています
効果が出やすかった条件
- 卵型顔貌
- 32歳未満
若く、皮膚・軟部組織の可塑性が保たれている症例ほど、ボトックスリフトの効果が出やすい傾向がありました。逆に言えば、年齢が高く、脂肪や皮膚のたるみが主因の場合、効果は限定的な可能性があります
ポイント②:「即時リフトアップ」は錯覚の可能性
一部では「打った直後から引き上がる」と説明されることもありますが、この研究では否定的です。
実際、施術直後に「どちらがボトックスを注射した側か」を当てられた医師は50%。つまり偶然レベルでした。
論文では、即時効果について
- 注入液のボリューム効果
- 針刺激による一時的な腫脹
による可能性が高いと考察されています。
本質的な効果は数日〜2週間かけて現れるものです。
当院のボトックスリフトに対する考え方
- 過度なリフトアップをうたわない
- HIFUや糸リフトの代替とは説明しない
- 「引き締め・軽度リフト・肌質改善」が主目的
としてボトックスリフトを行っています。
特に、
- フェイスラインのもたつき
- 首〜下顔面の軽度たるみ
- 毛穴・皮脂・テカリが気になる方
には、自然でダウンタイムの少ない選択肢になり得ます。
まとめ
- ボトックスリフト(皮内ボツリヌストキシン注射)には、エビデンス上一定のフェイスリフト効果がある
- ただし誰にでも強い効果が出る治療ではない
- 若年・卵型顔貌・軽度たるみが最も適応
- 即時効果を過信せず、適切な期待値設定が重要
美容医療は「効く・効かない」ではなく、
「どの患者さんに、どの程度、どの治療が適しているか」を見極めることが最も重要です。
当院では、こうした医学的根拠をもとに、
患者さん一人ひとりに合った治療をご提案しています。
References
The comparison between intradermal injection of abobotulinumtoxinA and normal saline for face-lifting: a split-face randomized controlled trial
Rungsima Wanitphakdeedecha, Chanida Ungaksornpairote, Arisa Kaewkes, Viboon Rojanavanich, Weeranut Phothong,&Woraphong Manuskiatti,
Department of Dermatology, Faculty of Medicine Siriraj Hospital, Mahidol University, Bangkok, Thailand
Bangkok Christian Hospital, Bangkok, Thailand
Journal of Cosmetic Dermatology, 15, 452--457
